コラム : 表皮化のメカニズム

この記事を編集した医師 : 保坂宗孝 |  最新アップデート 2022年8月1日

このページでは、皮膚がダメージを受けた後にみられる、大切なメカニズムについて取り上げます。

 

今回のテーマは、

キズが治る最終過程である、表皮化。

 

表皮化を起こすためには、その源が必要なのですが、何でしょうか?

 

主な源は、分裂能力を有する基底細胞です。

 

表皮と真皮の境にある基底細胞だけではなく、毛嚢壁・汗腺・皮脂腺の壁にも存在します(1)

図1 : 赤い部位には、表皮化の源が存在する。
図1 : 赤い部位には、表皮化の源が存在する。

ここからは、表皮化の観点から、キズについて考えてみましょう。

🌱治りやすいキズとは?

 

ズバリ、治りやすいキズとは、

 

"表皮化の源が残っているキズとなります。 

 

 

つまり、

 

・浅く、ダメージの少ないキズ

 

・縫い縮められて、表皮で覆われてるキズ

 

です (2)

図2 : 浅いキズ(左)、縫い縮められたキズ(右)
図2 : 浅いキズ(左)、縫い縮められたキズ(右)

これらのケースでは、表皮化の源により、サクサクと表皮化が進みます。

 

一方、治りにくいキズとは、どのようなキズでしょうか?

 

 

 

🌱 治りにくいキズとは?

 

ズバリ、"表皮化の源がダメージ受けてるキズ"です。

 

例えば、褥瘡や糖尿病潰瘍など(3)です。

図3 : 褥瘡(左)や糖尿病性潰瘍(右)は治りにくい
図3 : 褥瘡(左)や糖尿病性潰瘍(右)は治りにくい

この場合には、良性肉芽で覆われた後、肉芽が表皮で覆われないと、治癒には至りません。

 

なお、治癒が促進されるためには、感染が落ち着いている必要があります。

 

よかったら、以下の記事を参考にしてください 

 

▶︎コラム: 不良肉芽 vs 良性肉芽

 

ここまで読んでいただけたら、表皮化の重要性を理解いただけたか、と思います。

 

それでは、1番大切な、

 

"表皮化を有利に進めていくためには?"

 

を考えてみます。

 

 

🌱誰でもできる!表皮化を進めるポイント2

 

キズを湿潤状態に保つ(乾かさない)

 

感染予防する

 

とても簡単なことですが、徹底できてない方が多い印象です。

 

具体的に解説しましょう♪

 

 

🌱 キズを湿潤状態に保つ

 

"表皮化の源が育ちやすい環境とは、湿潤状態です。

 

湿潤状態だと、"表皮化の源"に栄養を与えることができるイメージです。

 

カサブタを作ってしまわないように、塗り薬や貼付剤を用います。

 

 

🌱 感染予防する

 

また、キズを綺麗に保つと、 "表皮化の源" に対するダメージを最小限に抑えられます。

 

 

感染を引き起こさないように、キズのチェックはこまめに行い、毎日洗浄を行います。

🌱 なかなか治らない時には....

 

ぜひ、病院を受診しましょう。

プロスタンジン軟膏やフィブラストスプレー (図4) を用いると、肉芽増生や上皮化が進みます。

図4 : プロスタンジン軟膏とフィブラストスプレー
図4 : プロスタンジン軟膏とフィブラストスプレー

🌱最後に

 

わずかな心がけにより、表皮化は順調に進んでくれます。簡単にまとめると、 "キズは綺麗に、湿潤に保つ" ことがポイントです。