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【本の紹介】精神科医が慢性疼痛を診ると

私たちが付き合っていかねばならない、痛み。

痛みは、突然やってきて、私たちを蝕みます。


日本では、慢性的な痛みを有する患者さんは、全人口の20%

また、その1/4は、治療に満足していないと言われています。


「いま、精神科医が痛みの領域で必要とされている」という文句に惹かれて、この本を手に取りました。


読んでみた感想を含め、ご紹介してみようと思います。




目次


・痛みの始まり

4つのメカニズム

・心理・社会的要因には2パターンある

・精神科での治療の実際

・最後に




🌱痛みの始まり


痛みの入口は侵害受容器と呼ばれ、痛み刺激は伝達線維 (線路を通じて脳に伝えられます。

脳が”痛い”と感じると、私たちは “痛い”と認識します。

痛みは、一瞬で終わる場合もあれば、続いてしまう場合もあります。

では、痛みを引き起こすメカニズムには、どんなものがあるでしょうか?



🌱4つのメカニズム


局所の炎症・ダメージ

局所に存在する侵害受容器が、刺激され続けます。結果的に、痛みを感じ続けます。


線路の異常

痛みを発信する線路に異常を来すと、痛みを感じ続けます。


疼痛抑制系の破綻

下行性抑制系・報酬系・内因性鎮静物質などは、本来、痛みを治める方向で働きます。

しかし、これらが何らかの理由で破綻すると、痛みを感じ続けます。


心理・社会的要因

のような器質的な要素がなくとも、痛みとして感じ続けます。


さて、の心理・社会的要因について深掘りしてみます。



🌱心理・社会的要因には2パターンある


1つ目は、痛みそのものと直接関連したものです。

当初は器質的な痛みですが、長期化するにつれて予期不安・不安・恐怖・回避行動といった心理的な要素が加わります。

例えば、足を骨折して、整形外科的には全く問題ないのですが、「骨折した時の、強烈な痛みが再び来たらどうしよう?」と引き続き不安を感じているケース。


2つ目は、痛みとは直接関係のない、何らかの葛藤などから生じるものです。


どちらの場合も、痛みの感覚が研ぎ澄まされてしまうため、痛みを維持させてしまう悪循環が形成されてしまいます。



🌱精神科での治療の実際


治療は、薬物療法と精神療法などをミックスして行うことが大切です。

薬物療法は、抗うつ薬を中心に行われ、精神療法は、CBT  ACT を中心に行われます。


CBTは、痛みのメカニズムを知る心理教育、痛みによる悪循環を探る事例の定式化、痛みに対する破局的な考えの認知再構築、リラクゼーションなどによる痛みのコントロール技術の習得を中心に行われます。


一方、ACTは、患者さんが避けられない痛みを受け入れながら、人生を豊かにする選択を進んで行うことを支援するセラピーです。

思考内容の変容を目指すCBTとは異なる性質を持ちます。



🌱最後に


痛みをココロからアプローチする、これは必要だと感じました。

しかし、患者さんの中には、「精神的に侮辱された」と感じる方が多数のはず。

あくまでも慎重に進めないといけませんね。