病気と治療:しみ

この記事を編集した医師 : 保坂宗孝 |  最新アップデート 2023年9月4日


一般的なシミとは、加齢と共に増加する、老人性色素斑を指します。


誰もが30代に突入すると、少しずつ気になってくるはずです。


このページでは、老人性色素斑を中心に、そのメカニズムから治療まで解説してみようと思います。


意外と分かりにくかったシミ、スーッと理解できるはずです。

最後まで読んでくれたら嬉しいです!


目次は次の通りです。




<目次>

・メラニンは、ただの悪者?

・シミとメラニンコントロール

・まず評価したいAMC

・忘れてはいけない、ターンオーバー遅延

・日焼け止めは超基本!

・治療の基本を押さえる

・守りのシミ治療

・攻めのシミ治療

・総合的治療が大切

Q/A



● メラニンは、ただの悪者?


メラノサイトで合成されたメラニンは、腕のように伸びた樹状突起を通り、ケラチノサイトに送られます。

メラニンはメラノサイトで合成される。メラニンは、樹状突起を通り、ケラチノサイトに送られる
メラニンはメラノサイトで合成される。メラニンは、樹状突起を通り、ケラチノサイトに送られる

このメラニンは、紫外線を吸収し、肌を守る役割を担います。


表皮の基底層では、どんどん新しいケラチノサイトが作られます。

これらが上に上に押し上がるため、上層のケラチノサイトは角質としてゴミ出し(排出)されます。


この繰り返しが “肌の新陳代謝(ターンオーバー)と呼ばれ、通常28日サイクルです。

ターンオーバーの略図
ターンオーバーの略図

ということで、メラニンは、私たちの身体にとって必要な物質なのです。

ただの悪者ではありません。


でも、何故、メラニン=悪者” みたいなイメージがあるのでしょうか?



● シミとメラニンコントロール


メラニンというと、シミの源みたいに説明されます。このため、メラニン=悪者” と考える方が多いのでしょう。


しかし、単純にメラニンが悪者という訳ではないこと、みなさんは理解できたはず。


シミの目立つ理由は、メラニンを上手くコントロールできていないからです。

組織学的には、シミに関わるケラチノサイト・メラノサイトのみならず、真皮に存在する線維芽細胞にも異常を認めます
組織学的には、シミに関わるケラチノサイト・メラノサイトのみならず、真皮に存在する線維芽細胞にも異常を認めます

メラニンコントロール不良の方が抱える問題は、

AMC(activity of melanocyte) の亢進

・ターンオーバーの遅延

2点に集約されるでしょう。


次からは、この2点について解説していきます。



● まず評価したいAMC


まず、AMCとは、メラノサイト活性のことを言います。


AMCを亢進させる要因としては、次のようなものが挙げられます。

あなたは、いくつ当てはまりますか?


・紫外線からの長時間曝露

・過剰なスキンケアによる、物理的な刺激

・ホルモンバランスの乱れ

・アレルギー体質

・レーザーやフォトによる、シミの悪化経験


1つでも当てはまるのであれば、AMCが亢進している可能性があります。



● 忘れてはいけない、ターンオーバー遅延


ターンオーバーとは、繰り返し行われる、肌の新陳代謝でした。

加齢を免れることのできない人間の肌。誰しもターンオーバーの乱れは必発でしょう。

ターンオーバーか乱れると、浅い部分のケラチノサイトにメラニンが蓄積する。結果的に、シミとして露呈する
ターンオーバーか乱れると、浅い部分のケラチノサイトにメラニンが蓄積する。結果的に、シミとして露呈する


いよいよ、”シミとどのように付き合っていけば良いのか?” について考えていこうと思います。


シミ治療も言われると、”シミ取りレーザー” を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?


レーザーは治療法の1つではあるのですが、レーザー治療するに至る過程がとっても大切なのです。



● 日焼け止めは超基本!


長時間にわたって紫外線を浴びると、メラノサイトの数は増え、メラニン生成は活発化してしまいます。

このため、日光照射を控えること・日焼け止め対策が基本となります。

● 治療の基本を押さえる


まずは、あなたのAMCを評価してみましょう。


あなたは、日々のスキンケア・ホルモンバランス・アレルギーに対応できていますか?

これらを徹底的にマークすることで、メラノサイトに対する過敏性を下げることができます。


それでは、治療の基本を押さえていきましょう。


守り治療の代表は、飲み薬・塗り薬・ピーリング。

攻め治療の代表は、レーザー・フォトといった機器治療。


シミ退治にはコンビネーション治療が効果的と言われています。

しかし、機器治療は逆効果というケースも散見されます。

適応をよく見極める必要性があるでしょう。



● 守りのシミ治療


初めてシミ治療を行う方・AMCが亢進してそうな方・肝斑が疑われる方は、守りのシミ治療からスタートしましょう。


ターゲットが何なのか?で分けて考えていきましょう。


最初のターゲットは、メラノサイト。これに直接作用するハイドロキノンは、この働きを弱める作用があります。

2つ目のターゲットは、メラニン。

トラネキサム酸により、プロスタグランジン・プラスミン・チロシナーゼがブロックされる結果、メラニン生成が抑制されます
トラネキサム酸により、プロスタグランジン・プラスミン・チロシナーゼがブロックされる結果、メラニン生成が抑制されます
ビタミンC内服・グルタチオン点滴・HQにより、チロシナーゼがブロックされてメラニン生成が抑制されます。また、ビタミンC内服やグルタチオン点滴には、濃色メラニンを淡色メラニンにする効果があると言われています。
ビタミンC内服・グルタチオン点滴・HQにより、チロシナーゼがブロックされてメラニン生成が抑制されます。また、ビタミンC内服やグルタチオン点滴には、濃色メラニンを淡色メラニンにする効果があると言われています。

3つ目のターゲットはターンオーバー。


日焼け対策・肌に優しい化粧品を用いること・充分は睡眠・禁煙は当然。トレチノインやピーリング剤には、ターンオーバーを速める力があります。

● 攻めのシミ治療


守りの治療では改善しない場合には、機器治療が考慮されます。


老人性色素斑では、異常ケラチノサイトを破壊または熱変性させます。

IPL (intense pulsed light)Qスイッチルビーレーザー・ピコレーザーが代表的な機器となります。


なお、肝斑 : ピコレーザー、そばかす : IPL、ADM : ピコレーザーor Qスイッチルビーレーザー が多い組み合わせです。

● 総合的治療が大切

<Q/A>


Q1くすみって、シミとどう違うのですか?

A1シミとくすみ。区別が難しい理由は、生成されるメカニズムは共通してるからです。そのメカニズムとは、表皮ターンオーバーが遅くなり、メラニン排出が滞ることによる、メラニンの表皮内沈着です。では、シミとくすみの違いとは何でしょうか?それは、メラニン沈着の分布。 シミは、ココにある” と指摘できる感じで、密に分布してるイメージ。一方、くすみは、ぼんやり全体的に暗いといった、粗に分布しているイメージです。


Q2 : Rubyレーザー・IPLなど治療しても消えない、薄いシミにはどう対処するべきですか?

A2 : 攻めの治療で改善しない場合には、スキンケアを見直してみた方が良いです。摩擦を少なくする努力が大切です。その上で、トラネキサム酸内服・ビタミンAやハイドロキノン塗布は有用と考えます。