この記事を編集した医師 : 保坂宗孝 | 最新アップデート 2023年2月15日
“男性の悩み” として知られてきた薄毛。
AGA (男性型脱毛症) は、聞き慣れた言葉だと思います。
しかし最近は、女性の毛髪ケアが、話題の上ることが増えているように感じます。
ここでは、女性に焦点を当てて、女性の毛髪について解説してみようと思います。
〈目次〉
・AGAの復習
・FPHLとは?
・FAGAについて
・FPHLと全身のこと
・抜ける以外の髪質変化
・毛髪の悩みは、精神的ダメージを与える
・治療の考え方
・基本的な4つの対策
・病院における治療
・結局、自分は、何をしたらいいのか?
・まとめ
・Q/A
● AGAの復習
男性の場合、殆どの脱毛症はAGA。
前頭部から頭頂部にかけて薄くなることを特徴とします。
男性ホルモン(アンドロゲン)が、脱毛因子TGF-βを産生し、毛乳頭や毛母細胞の働きを抑制させることで、
脱毛が生じます。
詳しい解説は➡︎ 男性の毛髪ケア を参照!
● FPHLとは?
FPHLとは、Female Pattern Hair Loss の略で、女性型脱毛症の総称です。
これには、
・FAGA (female type AGA)
・びまん性脱毛症(全身疾患による脱毛症)
・産後脱毛症
・円形脱毛症
・牽引性脱毛症
などが含まれます。
この中で多いのは、やはり、FAGAとびまん性脱毛症。
まずは、FAGAについて解説しましょう。
● FAGAについて
FAGAに関わる主因子は、遺伝・ホルモン。
男性ホルモンが女性ホルモンより優位になることにより、毛髪の成長期が短くなり、脱毛してしまうというメカニズム
です。
FAGAの抜け毛パターンは、AGAのように前頭部・頭頂部と決まっていません。
ルードヴィヒ (Ludwig)分類として知られています。
次に、びまん性脱毛症について解説していきましょう。
● FPHLと全身のこと
注意するべきポイントは、脱毛症の影で潜む “病気” を見逃さないこと。
どんな病気があるかというと、
・膠原病
・慢性甲状腺炎
・男性ホルモン産生腫瘍
・多嚢胞性卵胞
・貧血
など。
また、女性ならではの
・ピル内服
・過度のダイエット
も脱毛症の原因となります。
これらでは、毛髪が全体的に薄くなるという特徴があります。
毛髪に加えて全身のことが気になる方は、各専門医師に相談することが大切です。
● 抜ける以外の、髪質変化
歳を取ると気になってくるのが、髪質変化。
ハリコシ・ツヤ・白髪などが挙げられます。
若い毛髪は、成分 (ケラチン・水分・脂質) を豊富かつ均一に含んでおり、綺麗な円形状をしています。
毛母細胞・メラノサイトも豊富で、メラニン色素も沢山作られます。
しかし、歳とった毛髪は、成分の減少と不均一を来たし、楕円状に崩れていきます。
毛母細胞・メラノサイトも減少し、メラニン色素も減少していきます。
結果として、ハリコシの低下・ツヤの低下・白髪 をもたらします。
毛髪径は、30代までは年齢と共に太くなり、40歳前後をピークに細くなります。
また、生毛密度・毛のうねりは、年齢と共に単調に悪化します。
● 毛髪の悩みは、精神的ダメージを与える
FPHLは、AGAと比べて社会的な理解度が低い現実。このため、嫌な思いを経験された方も多いのではないでしょうか?
実は、毛髪で悩む女性の7割が、不眠・罪悪感・自尊心低下を経験しているとのこと。
女性にとって毛髪の悩みは、精神的ダメージに繋がっています。
ココロの安定を保つためにも、毛髪の悩みを解決していくべきです。
それでは、いよいよ治療の話に移っていきましょう!
● 基本的な4つの対策
a 生活習慣を見直す
b 毛髪ケア用品を見直す
c 物理的な原因は取り除く
d 医療機関を受診する
の4つです。
a 生活習慣を見直す
これが基本となりますが、実際的には難しいことかも知れませんね。
b 毛髪ケア用品を見直す
自分の頭皮に合う毛髪ケア用品を使うことは大切です。ネットで簡単に探すことができますよ!
c 物理的な原因は取り除く
被り物による蒸れ・紫外線・過剰な頭皮ケアは、頭皮にダメージを与えてしまいます。
d パントガール内服
女性の薄毛に効果的なサプリメントです。
パントテン酸カルシウム・アミノ酸・ビタミンB群・タンパク質などを配合し、毛髪の成長を促し、髪質や薄毛を
改善します。
また、コシやハリ、ツヤの無くなった髪、細くなった髪、弾力の無い髪を改善させます。
副作用の報告も少なく、安全性が高いため、継続的・長期的にご使用いただくことが可能です。
e 医療機関を受診する
a-dまで頑張ってみたものの、改善が見込めないケースも多くみられます。そんな時、ぜひぜひ医療に頼ってくださいね☆
● 病院における治療
いづれの脱毛症でも、原因の治療で改善するケースがあります。
このため、焦らずに経過観察という考えも重要です。
それでもなお改善しない場合には、症状に応じて以下の治療を検討していきましょう。
各疾患別の対策は、次項で解説しています!
ア 塗り薬
イ 飲み薬
ウ 注射
エ 植毛
の4つです。
ア 塗り薬
まずは、育毛剤から始める方が多いです(パントスチン、ロゲインなど)。
これに併せて内服薬を始める方が多いです。
イ 飲み薬
① スピロノラクトン
男性ホルモンから産出される、ジヒドロテストステロン(DHT)。DHTは、やがて脱毛因子を作ってしまいます。
スピロノラクトンにはDHTを減らし、発毛サイクルを整える働きがあります。
② ミノキシジル
血管拡張作用で血管を拡張し、血液を多く循環させることによって、毛母細胞に栄養素や酸素を供給しやすくして
くれます。
さらに、血流が促されることによって頭皮の栄養状態も良くなるため、髪の毛の成長の促進や抜け毛の抑制にも効果を
発揮します。
結果、健康的でハリ・コシのある髪の毛が育ちます。
なお、心臓や肝臓に不安のある方は、医師に確認してから内服してください。
ウ 注射
注射剤には、ミノキシジルとHARGの2種類があります。
両者の違いを簡単に図式化してみました。
効果という意味では魅力的ですが、注射の問題点は “痛み” です。針を刺す時点では問題ないことが多いです。
薬物を注入する際の痛みが強いことが特徴です。
痛みを緩和させるポイントは
・神経ブロック
・水光注射針
を併用することです☝️
エ 植毛
● 結局、自分は、何をしたらいいのか?
FAGAやびまん性脱毛症では、ア〜エを考えましょう。
なお、びまん性では、全身疾患が隠れていることがありましたね。まずは、これらの精査を忘れずに行いたいところです。
産後脱毛症では、頭皮の環境整備が第1。というのも、殆どのケースでは、自然に改善するためです。
円形脱毛症は、免疫が関与するタイプの脱毛症のため、免疫療法やステロイド療法の適応となってきます。
牽引性脱毛症は、物理的な原因を取っ払えば、殆どのケースで改善します。
● まとめ
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました😊
AGAと違って複雑のため、やや理解しづらい部分があったかも知れませんね。
FPHLの治療は、正しい診断がベースとなってきます。悩んでしまった場合には、自分で抱え込まずに、
医師に確認してくださいね🙇♂️
● Q/A
Q1 : 何故、女性はプロペシアを内服できないのか?
A1 :
① FPHLに対する有効性が、証明されていないため
② ホルモンバランスの乱れによる症状が目立ってしまうため
③ 胎児への悪影響があるため