コラム:キズアトを考える

この記事を編集した医師 : 保坂宗孝 |  最新アップデート 2022年12月29日

キズからキズアトへ

例えば、新車を買ったとします。車を使っている限り織り込み済みですが、目立つキズを作ってしまうことはありますよね。車を走らせていると、小石が跳ねて小さいキズが付き、フロントガラスに硬い物が当たってキズ付きます。時には運転操作を誤り、擦ったり凹ませたりします。キズを放置してしまうと、大きなキズアトになってしまいます。

一方、カラダにできるキズは、ケガ・自傷・手術などによりできます。きちんとケアしないと、汚いキズアトになってしまいます。また、車とは違い、ニキビ粉瘤などの腫瘍は、勝手にキズアトを作ってしまいます。
 

カラダのキズは、全てキズアトになる訳ではない

車にできたキズは、全てキズアトになってしまいます。しかし、カラダのキズはきちんとケアすると、キズアトゼロまたは目立ちにくいキズアトに留めることができます。詳しくはホームページの キレイなキズを作るために キズアトが心配な方へ を参考にしてください。


“治したい”という動機から始まる

キズを作ってしまうと、”はぁ、やってしまった…”と心理的に凹みますよね。車を例に考えると、小石が跳ねてできた小さいキズは諦めることができても、黒塗りに白い擦り傷は目立ってしまいます。カラダのキズも同じで、顔面のキズは体幹に比べて目立ってしまいます。もともと綺麗である程、落ち込みは強くなります。全ては”何とかして治したい”という気持ちのスイッチから始まりますが、これはキズアトの目立ちやすさと大きく関係します。


まずは調べる

“さあ治そう”と思うと、ネットサーフィンをすると思います。例えばニキビアトを調べると、クリニックの名前ばかり登場してきて内容はよく分からないのではないでしょうか。”治したいけど、どこに相談に行ったらよく分からない”という状況が生まれやすいのがキズアト領域です。


難しいから色んな治療法がある

キズアト治療というと、テーピング療法、マッサージ療法、切除縫合、皮弁形成、植皮、フラクショナルレーザー、Qスイッチレーザー、高周波ニードル、ダーマペン、PRP療法、bFGF療法、不死化ヒト歯髄幹細胞療法、ステロイド注入、ヒアルロン酸注入などなどあります。”どんなキズアトにどの治療がベストなのか?”について明確な答えは無く、非常に曖昧です。

キズアト治療にはガイドラインがないため、手探りな部分もあります。また、リスクを取らないと、効果がすぐにでる訳でないことが多く、忍耐の必要な治療になります。保険診療ではなく自費診療となるため、効果がゆっくりだと、”お金を払っているのに何で?”という強い不満に繋がってしまいます。


粉瘤・ニキビのキズアトは正直、難しい

ニキビ(粉瘤)で炎症を起こした結果できるのがニキビ(粉瘤)アトです。硬く凸凹した皮膚を滑らかにすることは、イメージ通りに難しいのです。ダーマペン、フラクショナルレーザー、高周波ニードル、PRP療法、bFGF療法、不死化ヒト歯髄幹細胞療法などを用いますが、治療回数が多くなることが現実です。また、ホルモンや生活習慣などが大きく関与しているため、総合的に治療することが大切です。


ケガ・手術によるキズアトは、効果が出やすい

キズアト周囲の皮膚がダメージを受けていないケースが多いです。このため、キズアトを取り除き周囲皮膚で再建すると、効果が出やすくなります。


自傷によるキズアト治療は、心が落ち着いてから
手首・前腕が多いですが、全身の皮膚に生じ得ます。自傷は繰り返してしまうことが多いため、キズアト治療を希望される場合には心のコントロールが付いてから行うべきです。よく話合いをして、一緒に治療方針を決めましょう。


カウンセリングにいらしてください

実際には、キズアトを拝見した後、治療方針を考えます。形成外科と精神科の経験を活かし、アドバイスさせていただきます。