この記事を編集した医師 : 保坂宗孝 | 最新アップデート 2022年12月29日
眼瞼下垂症とは?
まぶたが垂れ下がってきて、見えにくくなる病気です(写真1)。
分類・原因
腱膜性(加齢性)、顔面神経麻痺、重症筋無力症、眼瞼腫瘍、先天性などが挙げられます(表1)。
高齢者に多い腱膜性は、瞼板とミュラー筋・眼瞼挙筋腱膜の付着が緩み、眼瞼挙筋が頑張ってもまぶたが上がらない状態をいいます。また、皮膚のたるみも同時にみられることが多いです。
先天性は、生まれつき眼瞼挙筋の働きが弱い、または眼瞼挙筋の欠損があるものです。
症状
まぶたが垂れ下がると、見えにくくなります。見えにくさを解消するためにおでこの筋肉を駆使すると、頭痛・肩凝り・疲れを感じるようになります。また、まぶたが垂れると、「目つきが悪い」「疲れている」という印象を与えます。
重症度
MRD-1という数値を用いて評価します(図1-1)。
2.7mm以上が正常
1.5~2.7mmが軽度
-0.5~1.5mmが中等度
-0.5mm以下が重度
と分類されます。
「数値だけでは分かりにくい」という方のために。図1右を参考に、大雑把に把握することが可能です。
また、眉毛を固定し,下方視時の上眼瞼縁の位置を0として,上方視時の上眼瞼縁が何mm挙上したかも計測します。(図1-2)
挙筋機能
8mm以上 good
4~7mm moderate
3mm以下 poor
“マブタを開く能力が、どの程度あるのか”を評価できます。
治療法
目元を見て第一印象は作られてしまうため、目元のケアはとても大切です。
手術方法には埋没法、拡大埋没法、経結膜的眼瞼挙筋腱膜前転短縮術、経皮的眼瞼挙筋腱膜前転短縮術、眉下切開術、筋膜吊り上げ術などがあります。分かりやすく理解するためには、切らないタイプ(図1)と切るタイプ(図2,3)に分けて考えるとよいです。
(眼瞼下垂に対する)埋没法
眼瞼挙筋に通糸する挙筋法には、マブタを開きやすくする効果があります。
しかし、手術の適応は限定され、以下の3つを満たす方。
①もともと一重
②マブタの開きが少し悪い(軽度)
③たるみがわずか
拡大埋没法
通常の埋没法と違い、瞼板にも通糸します。
手術の適応は拡大され、以下の2つを満たす方
①マブタの開きがやや悪い(中等度まで)
②たるみがわずか
埋没法では、何をどこに埋没するのか?
埋没法では、マブタの表側または裏側に結び目を作ります。その結び目は、それぞれ皮下または粘膜下に埋没させます。
経結膜的眼瞼挙筋腱膜前転短縮術
結膜(マブタ裏の柔らかい部分)を切開し、眼瞼挙筋腱膜と瞼板を縫合する方法です(図2)。
挙筋機能が5mm以上の方が適応となります。
なお、たるみの強い方は適応外です。
経皮的眼瞼挙筋腱膜前転短縮術
皮膚を切開し、眼瞼挙筋腱膜と瞼板を縫合する方法です(図3)。
挙筋機能が5mm以上の方が、適応となります。
なお、たるみの強い方にもオススメです。
なお、皮膚切除量の推測は、以下の点から難しいです。
・術後の開瞼の改善度
・凹み目の改善度
・眉毛位置の変化
皮膚を取り過ぎてしまうと、修正が困難となってしまいます。
中等症以上のケースでは、術後3-6ヶ月の経過観察し、2期的に皮膚切除を考慮することを基本方針としています。
眉毛下切開術
眉毛下を切開し、皮膚のたるみを切除。
その後、皮膚を丁寧に縫合します。
開瞼力の弱い方・眉毛と上睫毛が近い方・キズアトを許容できない方などは適応外となります。
保険診療?自由診療?
眼瞼下垂症は病気であるため、保険診療が認められています。
マブタを開きにくい(開瞼障害)・頭痛・肩凝りといった症状があり、医師が手術の必要性を判断した場合には、保険内手術が適応される可能性があります。
保険内手術は眼瞼挙筋腱膜前転短縮術または眉下切開術に限定されます(先天性眼瞼下垂については割愛させていただきます)。
自由診療の対象は、病的とまでは言えないケース・病的でも保険で認められていない術式を取るケースです。
つまり、保険で認められていない部分、それは ”マブタや二重のカタチ” を強く意識した術式と言えます。
なお、保険?自由?については、実際のカウンセリングで最終判断となります。
治療の有効性
マブタが上がるようにすることで、結果として、視野を広げたり、整容的に改善したり、頭痛・肩凝りの改善が望めます。
どのような効果が得られるかは、患者さんの状態により個人差あります。
気になる痛みケアは?
基本的には局所麻酔で行いますが、重い痛みを感じることがあります。痛みが辛い場合には、麻酔薬追加や鎮痛剤投与で対応します。
また、複数回手術をされている方は、痛みを感じやすい傾向にあります。
関連コラム
Q/A
Q1 : 芸能人W.Aさんも眼瞼下垂の手術をされました。あのような違和感ある二重になりますか?
A1 : マブタの開きを良くするだけではなく、皮膚と脂肪をバランス良く切除して二重を形成します。違和感のない結果を目指しています。
Q2 : フェニレフリンテストって何ですか?
A2 : まず、フェニレフリンというのはアドレナリン作用薬の1つで、交感神経を刺激する薬物です。マブタは、ミュラー筋と眼瞼挙筋という2つの筋肉により開かれます。ミュラー筋は、交感神経(アドレナリンの影響を受ける神経)によって支配されています。
フェニレフリンを含む液体を点眼をすると、交感神経が強制的に働かさせる結果、一時的に開瞼量は変化します。
腱膜性眼瞼下垂症と診断した際、約70%の患者では、開瞼量は改善すると予想されます。
一方、ミュラー筋の機能までも破綻している場合には、開瞼量は改善しません。
つまり、フェニレフリンに反応する場合には、挙筋短縮術で改善する見込みが保証されます。
フェニレフリンテストは、治療方針を考える上で大切となる検査です。