病気と治療 : 腋臭症

この記事を編集した医師 : 保坂宗孝 |  最新アップデート 2022年12月29日

腋臭症とは、簡単に言うと、臭いにより社会生活に問題を引き起こす遺伝性疾患 (ABCC11遺伝子)

日本人の10人に1人が悩む、メジャーな病気と言えます。


実は、保険・自費診療を通じて、数多くの相談を抱える分野でもあるのです。

残念ながら、”汗や臭いだけ良くなればいい” という時代は終わったのではないでしょうか?


ここでは、色んな治療法を紹介し、分かりやすく解説していきます。




<目次>

・臭いの秘密

・まずは、生活指導から

・治療のターゲットを理解する

・どんな治療法があるの??

Q/A

 
● 臭いの秘密

ワキの皮下にはアポクリン腺、エクリン腺、皮脂腺があります(図1)。アポクリン腺から出る汗には脂肪酸が含まれます。脂肪酸は、皮膚表面の細菌によって分解され、3メチル2へキセノイン酸となり、これが臭うといわれています。ワキガの人はアポクリン腺が大きくて、その数も多く、分泌量も多い傾向があります。また、エクリン腺から汗が大量に出る状態を多汗症と呼びますが、腋臭症は多汗症を併発していることもしばしばあります(図2)。
図1 : ワキの皮下にはアポクリン腺、エクリン腺、皮脂腺
図1 : ワキの皮下にはアポクリン腺、エクリン腺、皮脂腺
図2 : アポクリン腺から臭い、エクリン腺から汗が発生します。
図2 : アポクリン腺から臭い、エクリン腺から汗が発生します。
アポクリン腺

臭いの原因となる、アポクリン腺


● まずは生活指導から

7つの注意点を、まとめてみました。


①こまめにシャワー浴びる
②薬用石鹸を使用する
③日中、アルコール綿で拭く(皮膚の弱い方は注意)
④制汗剤は皮脂・細菌が減った上記で使用する
⑤除毛する
⑥天然素材の衣類にする
⑦生活リズムを整える


● 治療のターゲットを理解する

治療のターゲット層は共通していて、真皮と皮下脂肪の境目になります(図3)。
赤枠層には、エクリン腺・アポクリン腺の重要部分が存在しています。

この領域を治療すると、ワキガを改善させることができるのです。

図3 : ワキガ治療のターゲット
図3 : ワキガ治療のターゲット
● どんな治療法があるのか?

ざっくり挙げると、

皮弁法、吸引法、ミラドライ、 ビューホットボトックス注射など。前2個は保険内手術ですが、それ以外は自費となります。

施術内容や注意点については、それぞれの項目を参照してくださいね。


 
Q/A
Q1 : ワキガの手術をすると、他の部位の汗が増えるのですか?
A1 : 増えません。
ETS(胸腔鏡下交感神経節遮断術)治療後には、治療対象の発汗が抑えられる代わりに他部位の汗が増えることがあります。この現象は代償性発汗と呼ばれています。

Q2 : 臭いは完全に無くなりますか?

A2 : アポクリン汗腺を全て取り除くことは不可能、つまり臭いを完全に無くすことはできないと考えています。しかし、臭いの減少により、多くの患者さんに満足していただいております。


Q3: 脱毛効果もあるのですか?

A3 : ボトックス注射以外では、個人差ありますが、ある程度の脱毛効果を期待できます。


Q4 : ワキ以外にも、ワキガはあるのですか?

A4 : 乳輪・VIOにもワキガはあります。


Q5ワキガ手術の麻酔法は?

A5 : ワキは、通常、局所麻酔で行います。乳輪単独の場合も範囲が狭いため、局所麻酔で足りるでしょう。

しかし、VIOは麻酔散布にかかる負担が大きいため(敏感部位のため、痛みを強く感じる)、静脈麻酔を併用します。


Q6汗は、完全に無くなりますか?

A6答えは、完全には無くなりません。ワキの皮膚には、水分も必要ですし、多汗が改善されるイメージ。アポクリン腺と同様に、全てのエクリン腺が破壊される訳ではない様です。